【リストラ・ペップトーク】 第12話: 川上(上流)が強い仕組み
第2部 立志編 第3章 やる時はやる、自分を貫く
第12話: 川上(上流)が強い仕組み
1)ポジション取りが大切
私が最初に勤めたコンサルティング会社は、事業計画の立て方や社員研修の進め方など、様々なコンサルティング・ノウハウを標準化(パッケージ化)し、全国の税理士や中小企業診断士などの士業の先生方をフランチャイズ方式で連携して、ノウハウを提供していました。
この場合、当社がフランチャイザー(FCザー)、士業の先生方が(FCジー)という関係になります。私はスーパーバイザー(SV)として、担当したFCジーにパッケージ化されたノウハウについて情報提供したり、FCジーがノウハウを使ってコンサルティング業務ができるよう、セミナーを開催して企業担当者を集めたり、訪問して経営者に向けて営業活動を展開しました。
【いかに主導権を握るか】
若い段階でSVとして営業活動やセミナー講師としての活動などを経験できたことは、私の人生にとって、かけがえのない大きな財産となりました。
また、事業に取り組む上では、川上(上流)にポジションをとることが重要であること、また下流に位置せざるを得ない場合は、圧倒的な力を持つ必要があることを、理屈を超えて体感できました。
かつて商流といえば「製造業→卸売業→小売業→消費者」と商品が流れ、上流にいる製造業が“メーカー希望小売価格”を設定して、商流を牛耳っていました。
しかし、流通革命が起こり、いまでは大型量販店(小売業)が幅を利かせています。川上(上流)に対して強くモノを言えるだけの販売量を誇り、主導権を握ることができたからです。
コンサルティングのような目に見えない商品であっても理屈は同じです。やはりノウハウを開発する側(FCザー)の方が川上(上流)にポジション取りし、主導権を握ることができます。
FCジーが力を持つためには、顧客企業すなわちノウハウの販売見込み先を多数抱えるか、コンサルティング力(指導力や講演力など)を圧倒的なレベルに高めるしかありません。
2.謙虚な気持ちを忘れずに
コンサルティングのフランチャイズ化は、当初は珍しさも手伝って伸びていきましたが、数年後に破綻してしまいました。
FCジーの先生方の中で、要は稼げない方々が、「加盟料1,000万円を返せ。“標準化されたノウハウを使って大いにコンサルティング事業が展開できる”という謳い文句にダマされた」ということで訴訟沙汰になったのです。
私が20年後にお世話になることになった中小企業診断士の先生は、実は私がSVとして担当したFCジーの一人だったのです。
その先生は、ノウハウを上手く使いこなし、また私が紹介した地方銀行の担当者とうまく連携して営業活動を効果的に進め、けっこう事業として成功しましたので、あながちFCザーだけが悪いとは言い切れないでしょう。
【人間だもの・・・感情がある】
フランチャイズ化が破たんした要因はいくつかあるのですが、私の人生に関係のある事柄に絞るとすると・・・それは人間関係です。
FCザーにとって、FCジーは高額な加盟料を払っていただいたお客様ですが、事業を成功させるために指導をする立場でもあるのです。
その指導を行うSVが「相手が大切なお客様であり、かつ指導する相手でもある」という微妙な関係を理解して接すればよいのですが、ほとんどのSVが20歳代後半と社会経験が浅く、機微が分からぬままFCジーの先生方や担当者と接していたのです。
FCザーの上層部もSVに対して、「FCジーをお客様扱いするな。指導するという姿勢を崩すな。FCジーにどんどんコンサル業務を受注させて、その売り上げからロイヤリティーを払ってもらい、SVの収入アップにつなげろ。」と繰り返し訓示しました。
そのため、SVの中には居丈高に失礼な態度でFCジーに接する者も多かったのです。FCジーの担当者は若い人も多く、「なんだとー、ふざけやがって」と反発したり、「どーせ、自分たちは指導される立場さ」と卑屈になったり・・・いずれにせよ、信頼関係を深めてコンサル業務の受注増に手を取り合って邁進するという構図は崩れ去っていきました。
【事業において留意すべきこと】
こうした状況下で、FCザーの上層部は「ノウハウのレベルは高い」、「フランチャイズのシステムは極めて機能的で完成度が高い」といった観点から、現場での人間関係について真剣に調べて手を打とうとはしませんでした。
こうした成功と失敗の両面がドロドロに入り混じった現場を若いころに体験できたことは、個人的には勉強になりました。決して他山の石とせず、自分の事業および顧客企業の事業に対して、次の2点について常に考えて取り組むことが大切です。
●事業のシステムや運用方法に完璧を期して取り組むことは大事。ただし、事業を動かすのは人間であり、関わりのある人間の心情や立場といったものも「経営資源」として大切にし、必ず活かすこと。
●事業が成功しているときほど謙虚になり、たとえ自分の知識や見識からは外れていたとしても、現場からの声には真摯に耳を傾け、驕ることなく反省すべきところは反省して改善に取り組むこと。
いまでは落ち着いて書けていますが、その後の人生の中で、こうした教訓を生かせずに右往左往してしまうことになるのですが、それはまた後述します。
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ご参考:ホームページ 雑記帳のバックナンバー
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