【社会】 また「喉元を過ぎれば熱さを忘れる」・・・リスクマネジメントが根付きません。
木曽の御嶽山が噴火、戦後最悪の犠牲
先月27日、御嶽山が噴火し、山頂付近にいた登山者を中心に、47名の方々が犠牲となり、まだ20名ほどが行方不明のままという、火山噴火の被害としては戦後最大の大惨事となりました。まずは、犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。
【狼少年とリスクマネジメント】
イソップ童話として有名な「狼少年(羊飼いと狼)」の話は皆さんもご存知でしょう。この話の中で、少年は「狼が出るぞ」と村人に嘘をつき続け、最後は狼に食べられてしまう・・・嘘をついた悪い少年ということになっていますが、本当にそうでしょうか?
占部流解釈:
悪いのは村人の方で、何らかの事情で悪意をもって少年を嘘つきに仕立て上げたのです。
実際のところ、本当に狼は村に出没し、現に少年は狼に食べられ犠牲になったではありませんか。少年が犠牲にならなければ、おそらく他の村人が犠牲になったことでしょう。
狼が本当に出た以上、少年が言ったことは嘘ではないのです。むしろ、警告を発し続け、最後には自分自身が犠牲になった・・・いわば村の英雄として崇められてしかるべきなのです。
この童話は、リスクマネジメントの何たるかを如実に示しています。危険が差し迫ったとき、勇気を持って周囲に警告を発し続けるべきなのです。
たとえ何度か空振りに終わったとしても、周囲は「嘘をつくな」と警告者を責めるのではなく、「何事もなかったという幸運」に感謝すべきなのです。
【論点が違う・・・予知できなかったことが問題ではない】
御嶽山の噴火による犠牲者が多かったのは、自然災害が世界的にも多い国でありながら、リスクマネジメントの発想が普及していないためです。
「今回の噴火は水蒸気爆発であり、予知が難しい」と専門家がTVの報道番組で解説していましたが、おそらくその通りでしょう。
しかし、問題は、予知ができなかったことではなく、『先月、御嶽山で地震が80回以上発生した日がある』という事実が広く知らされなかったことなのです。
【情報は広く公開、あとは自己責任・・・これが基本】
おそらく、それらの地震を後の大噴火の “予兆” と断定するのは難しいという反論もあるでしょう。それもまた、おそらくその通りでしょう。
ただし、先月の我が家での団欒や知人との会話の中で、「最近、岐阜県のあたりを中心に、やたら地震が多いよね」という話題が複数回のぼっていたことを私は忘れません。
もし、御嶽山での地震の情報が事前に広く知らされていたら、私は登山好きの友人に「木曽のあたりは、やめといた方がいいよ」と言ったことでしょう。
「科学的根拠は?」と聞かれても、そんなことは知ったことではありません。自分と家族と友人の命を救うのに、いちいち根拠など考えてはいられません。それは全ての事態が終わってから、今後のために分析して考えればよいことです。
果たして、噴火の当日に火口付近にいた250名の登山者のうち、何人が地震のことを認知していたでしょうか?
災害に関する情報がきちんと公開され、お互いに警戒し合う・・・こうした風潮が日本中に広がれば、来たる新たな災害においても被害を最小限に抑える効果があるはずです。
そうして初めてリスクマネジメントが根付いたと言えるわけで、そのためには些細な情報であっても公開し、それを国民が「自分の身は自分で守る」という意識をもって判断していくべきなのです。
【リスクの多い日本、今度こそリスクマネジメント!】
3年前の東日本大震災が発生した2日前に震度4の地震があり、我々はその予兆を活かせなかったという悔しい思いをしています。
ご参考:
2011年4月13日 大震災の2日前に予兆!この事実を重く受け止めたい。
そして、今回の御嶽山の噴火でも予兆らしき事態を見逃し、犠牲者を増やしてしまいました。まさに、「喉元を過ぎれば熱さを忘れる」という状況です。
私もリスクマネジメントのセミナーを通して、さらに力を入れて訴えたいと思いますが、皆さんにも再度お考えいただきたいのです。
関係省庁や専門機関の方々:
“狼少年”になってください。どんな小さな予兆らしきものでも、情報公開してください。
外れたら後で責められる、と思うよりも、万が一の際に多くの犠牲が出てしまうことに思いを至らせてください。
一般の方々:
警報や警告が外れても、「ダメじゃないか」と責めるのではなく、「何事もなくて良かった」と発想してください。
リスクマネジメントが我が国に根付き、必ず起こるであろう大災害の際に、犠牲が最小限で済むことを祈らずにいられません。
ご参考:
※余地の限界について(インターネットに掲載されていた記事より)
「御嶽山噴火」予測できなかったのはなぜか?
ご参考:
※東日本大震災が発生した年に記載した、リスクマネジメントに関数する「雑記帳」の記事の一部です。
2011年7月12日 リスク評価・・・政治から個人レベルに至るまで必要な時代
2011年7月14日 リスク評価の追加説明です。
ご参考:ホームページ 雑記帳のバックナンバー
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